任意売却
「任意売却」でローン滞納の損害を最小限に
不動産の売却は、ときに借金やローンの返済手段としても用いられます。特に「任意売却」は、大切な資産が競売にかけられてしまうことを防ぐ、「最後の砦」といってもいいでしょう。
住宅ローンの返済において、任意売却は債務者の心強い味方になり得ます。
もしものときに生活を再建し、新たな人生の出発を果たすためにも、知っておきたい売却方法です。
「任意売却」は「競売」よりも有利な売却方法
任意売却とは、簡単にいうと「競売よりも高い価格で不動産を売却し、ローンや債務の返済に充てる方法」です。ですから、任意売却を知るためにはまず「競売」についても知っておく必要があります。
不動産競売とは
住宅を購入するにあたり、多くの人が金融機関から住宅ローンの融資を受けています。住宅ローンでは、毎月決まった額を返済していきます。このとき、何らかの事情でローン返済が滞ると、金融機関は融資したお金を一括で回収しようとします。
支払いが滞ってから1~3カ月間は「督促状」などで催促してくるでしょう。しかし滞納期間が4~6カ月に達すると、金融機関は「催告書」での通知を経て「不動産競売」に移行します。不動産競売は、金融機関(債権者)が住宅の所有者(債務者)から少しでもお金を回収しようと、強制的に担保(住宅)を売却してしまう手続きです。
裁判所が所有者の同意なしに売却することを認め、抵当権を持つ金融機関がオークション形式で買い手を募ります。不動産競売に移行すると、裁判所から「競売開始決定通知」という書類が届きます。競売開始決定通知が届いてしまうと、もはや住宅の売却を防ぐ手段はないと言えます。
競売での落札価格は、市場価格の5割から7割程度が目安です。売却が成功しても、住宅ローン残債に満たないことも珍しくありません。そのため、住宅を強制的に売却されて住まいを失った上に、多額の住宅ローンが残ったまま……という事態も考えられるのです。
苦境でのダメージをおさえる「任意売却」
このように競売は、債務者にとってデメリットが大きなものです。できることなら回避すべきでしょう。そこで登場するのが「任意売却」です。任意売却では、金融機関の同意を得た上で、住宅を市場相場に近い価格で売却することが可能です。
通常、住宅ローンの担保となっている不動産は、ローン残債がある状態なので売却できません。もし売却するならば、ローン残債を全額返済することで抵当権を抹消しなくてはならないのです。しかし任意売却では、ローン残債がある状態でも競売より高く住宅を売却でき、ローン滞納に陥るような苦境でのダメージを最小限に抑えることが可能になるのです。
任意売却のメリット・デメリット
競売よりも有利な条件で住まいを売却できる任意売却。しかし、メリットとともにデメリットも理解しておきましょう。
メリット
・不動産競売に比べて高く売れる可能性がある
・売却後は「賃貸居住者」として住み続けられる可能性がある
・競売に比べると資金面で追い詰められずに、後々の計画が立てやすい
デメリット
・債権者との住宅ローン支払い停止交渉と同意が必要
・住宅ローン滞納期間が延びることで、信用情報が悪化する
・一定期間内に任意売却で売れなかった場合、競売に移行してしまう
・売却したお金を充当してもまだローンが残っている場合は、残債の支払い義務がある
・内覧に立ち会うなどの手間がかかる
メリットは主に「価格面」です。市場相場に近い価格で売却できれば、ローンの返済を含めたその後の計画が立てやすくなるでしょう。また、買い手と交渉して元の住まいでの賃貸借契約を結べば、立ち退かずに住み続けることができます。一方、交渉の難しさや時間的な制約、不確実性といったデメリットがあることも理解しておきましょう。
任意売却は競売前の「最後の砦」
このように、任意売却は法的な強制執行である競売を回避するための手段であり、いわば「最後の砦」です。しかし、時間的な制約がある中で行う特殊な売却方法なので、経験が浅い不動産会社では任意売却を成功させられません。
不動産会社は賃貸や仲介、買取など、それぞれ得意分野が異なります。しっかりと任意売却のノウハウを持っている不動産会社を選ぶようにしましょう。ホームページへの実績掲載や法的な知識、交渉力があることはもちろん、任意売却に強い弁護士などと提携しているかもポイントです。任意売却を扱う専門機関への相談も視野に入れながら、サポート体制を整えることをおすすめします。